2011年4月29日金曜日

18. エネルギーあふれるチーム

勢いのある集団を作り上げるために、モチベーションというものに関心が寄せられています。特に最近では、この傾向が強く、少々関心が向きすぎているような気がします。人やチームの高揚は、「モチベーションという名のスイッチ」を誰かが押して生まれるものではありません。もちろん、報酬や制度といった仕組みも大切ですが、これらは、動かし難いものに対して何とか外部から刺激を与え、動かそうとするものです。本当に、人はそのようなことだけで必死に努力し、そして勢いのあるチームが生まれのでしょうか。ちょっと無理があるような気がします。

まず、大前提となるのは、メンバーやリーダー同士が信頼し合うことができるのかということです。お互いのことを気にする気持ち、気にかける気持ちが、まず、必要なはずです。これは、組織の制度や管理手法の問題ではありません。最近は、人と人とのつながりが重要であると言いながらも、実際にはあまり重視されておらず、むしろ、軽視されているように思えます。

また、別の見方として、意図的にではなく、自然とあることに意識を集中し、時間を忘れるほどの高揚感を得るという状態を研究した「フロー理論」というものがあります。外部からの強引な刺激というより、ある条件が整ったときに何かの力に自然と動かされるような感覚で行動し、高い成果を上げる、そんなことの存在が関心を集めています。制度、報酬、管理手法という「外圧」の世界から、「人」を中心とした考え方へと、ようやく一歩進もうとしています。

今までの取り組みは、扱い易いことについては手厚く対応し、扱い難い「人」の問題については、掛け声だけで、根本的なことに手をつけることなく、仕組みや制度で何とか対応したように見せようとしているように思います。そろそろ、こんなやり方から離れ、人と人との関係について、真剣に考えていく時期に来ていると思います。価値ある商品やサービスを生み出すのは、仕組みや制度といった外部からの人工的な刺激ではなく、人の内側から生まれるものや、信頼の絆で結ばれた仲間たちの存在なのではないでしょうか。

スタッフはまずお互いを思いやることが大切だと理解できてこそ、お客様に対して意義あるもてなしができるのだ。レストランだけでなくどのような分野でも、メンバーが互いに尊重しあい、信頼しあうことで、エネルギーにあふれ、しっかりと動機づけのできた勝てるチームを作っていける。ニューヨーク レストラングループ オーナー (P175)」Danny Meyer (2008) “Setting the Table: The Transforming Power of Hospitality in Business (おもてなしの天才:ニューヨークの風雲児が実践する成功のレシピ)” Harper Paperbacks (ダイヤモンド社)

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