2010年5月30日日曜日

7.あらゆる可能性を想定

交渉の場面では、最初に考えていたことと全く異なることが起こるといったことは、よくあることです。交渉のスタートポイントが違っていたり、高圧的な態度で臨んでくると思っていたがそうでなかったり、そもそも、参加するはずのキーマンがその場にいなかったりと。

話のテンポを崩すことなく、その場で的確な判断をしていくためには、交渉の前には、譲れることを明確しておくだけでなく、あらかじめ、いろいろなことを考えておくことが大切です。その場で、即座に考えるのは、相当な経験を持った人でも難しいことです。

この場面では、どんなことを相手が言ってくる可能性があるのか。どのように話を展開してくるのか。自分たちの主張をどのように崩そうとしてくるのか。ありとあらゆることを考えておかなければなりません。これは、想像力の問題でもありますが、的確な判断をして行くためには、起こりえるあらゆる場面をビジュアルで具体的に想定し、あらかじめ答えや話の流れを作る言葉を用意しておく必要があります。

最近になって気がついたことですが、将来起こりえる可能性の話をしたときに、何か否定的な印象を持つ人がいるようです。将来については、いろいろなことが起こりえるため、好ましいこと、好ましくないことなどを同じレベルで語っているような場面でも、好ましくないことについては、ちょっと特別な感情を持つようです。あくまで可能性の話をしているに過ぎないのですが、そうとは受け取れず、否定的な話をしていると取られることがあります。「そんなことを言っていたら、何もやれないでしょう」といった具合に少し感情的にとられることさえもあります。可能性は、あくまで可能性の話なのですが。

このように、良い話であれ、悪い話であれ、事前に、あらゆることを想定しておくことは、どのようなことが起ころうとも慌てずに交渉を進め、最終的に目指す合意点で事を成し遂げるために、非常に大切なことなのです。

交渉の場において瞬時の判断を要求されるときに、勇気と慎重さのハザマでうろうろしている暇はない。そのような状況は、事前の調査と分析で、ありとあらゆる可能性を想定しておくことによって乗り切れる。- 国際スポーツイベント 誘致ロビイスト - (P16)
諸星 裕 (2007) “プロ交渉人:世界は「交渉」で動く (集英社新書)” 集英社

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